巷では、幼少期の海外生活は、帰国後にすぐ英語力は忘れてしまうし、一番意味ない帯同だよね~と言われがち。慰めの言葉で、それでも海外生活はいい経験だし、だの、英語に対する興味は芽生えただろうし、だの言われるけど、そんなのは、ほんと慰め。私にも数人の幼少期帰国子女友達がいるけど、全員、ほんと全員が、英語はすぽーんと忘れていて壊滅的っていう。苦笑 (※ 小学生以降の帰国子女はまた違います。念のため) 現代なら、オンライン英会話やインターのafter school program、帰国子女向け英語塾などでフォローアップして~とか方法はあるはあるけど、私なりに納得したいので、いろいろ調べてみました。
よく聞くのが、「幼稚園までは英語優位なくらいに、英語ペラペラだったんだけどね~」というコメント。これは複数ソースから聞いているので、就学前帰国子女あるあるのはず。でも1年生や低学年で日本に戻ると、さらっと日本語に上書きされて、英語は消えてしまう。
なぜだ。
母国語式/早期言語習得では、文法構造を理解せずに、環境のままに大量のインプットにより習得していくので、インプットがなくなったので消えてしまったのかなと、最初は思っていました。まぁ、それもあるかもしれない。じゃぁこれは何?なんでこうなるの?と考えた時に、以下の2つの理由を思ったんですよね。
① 接触量が少なすぎて、自然消滅している
② 言語が「思考力」まで根付いていない
① のほうはシンプル。大人の言語習得もそうだけど、使わないんだから消えてしまう・出てこないくらい奥深い場所に置かれてしまうんでしょうね。なので、これは単純に「接触量を増やす必要がある」のが対策になる。これが、従来の一般的な「(帰国後の)英語力の維持」で求められていた対策方法かと。
ただ、個人的には ② のほうがポイントだと思っているんですよね。これは早期学習独特の理由。9歳/10歳の壁にも関連し、小学校中学年以降も海外生活をしていると英語力がしっかり残っている、にも関連するかと。0歳~6歳までって、日本語/母語でも思考力の定着もまだ不安定だし、抽象的思考が”発達段階として至っていない”状況なんですよね。なので、その時に英語をインプットしていても、あくまでも右から左に会話のキャッチボールはできるようになっても、思考力・読解力が伴わないレベルなので、定着性も低く、抜けやすいのかと。これ、私がずーっと不思議に思っていた「幼少期に電車/動物/恐竜図鑑を片っ端から暗記していたのに、低学年になる頃にはすっかり忘れている」理由と関連していると思っています。これも同じ、単語量は増えていても、思考の深みが無い状態だから。(※ 個人の意見です)
自分の中で漠然と上記は気になっていたのですが、分かりやすい解説には出会えないままでした。経験談やフォロー方法はいろいろ見つかるんですが、そもそもの原因究明の説明が見当たらず、モヤモヤしていました。が、分かりやすく解説してくれている本が、家の本棚にありました。灯台下暗し。笑
この本は、日本で育てるバイリンガルだけでなく、海外育ちのバイリンガルについても、日本だけでなく、海外家庭の事例も入れて、学術的引用もたくさん入れて説明してくれているので、説得力があり、気に入っています。ちょっとお堅い書き方になっているけど、「バイリンガル」という単語で一括りにされがちなバイリンガル教育を、それぞれのタイプに分別して分析・解説してくれているので、自分のバイリンガル教育のタイプを整理・検討するのにも使えておススメです。
この本に、DLSとALPという単語があり、これが私の「幼少期の会話力」と「思考力」の説明をしてくれていました。本にはいくつか面白い用語があったので、それぞれ書いておきます。
・ BICS (Basic Interpersonal Communicative Skills)
基礎的なコミュニケーション能力、日常の会話能力のこと。一般的に1年~2年で習得する。
・ CALP (Cognitive Academic Language Proficiency)
教科学習言語能力、学問的な思考をするときに必要な言語能力、つまり思考力ありきの言語力のこと。習得まで5年~7年必要と言われている。
BICSとCALPは言語学でも一般的に使われるので、Google検索もこっちのほうがよく結果が探しやすかったです。もう一段階深堀した、以下の3単語(CF, DLS, ALP)は、あまり適切な検索結果にたどり着けなかったのですが、本ではこれらの単語で説明していました。
・ CF (Conversational Fluency)
会話の流ちょう度。BICSと同じ。
・ DLS (Discrete Language Skills)
弁別的言語能力。文字や文法のルールを認識・操作できる言語力。
・ ALP (Academic Language Proficiency)
教科学習言語能力。CALPと同じ。
どちらにせよ、就学前帰国子女は、BICS/CF(日常会話)は早々に習得できても、思考力・読解力・分析力を必要とするCALP/ALP(教科学習言語力)までたどり着いていないので、英語が薄っぺらく抜けやすい状況なうえに、帰国後の日本語の通常の教育課程で思考力/読解力を学習すると、上書きされてしまうんでしょうね。就学前だと、文法学習は特に無しに、母国語式で大量のインプットからの経験則で学んだ場合が殆どで、DLSの定着も微妙な状態だろうし。
じゃぁどうする
たん的に考えるなら、思考力を作る教育を頑張るしかない。語彙・構造・概念・読解・分析・思考、全てを深める必要があるので、適切な教科学習をするしかないかなと。「適切な」という単語をつけた理由としては、これは4技能全てが必要になるから。どこまでのバイリンガルを求めるかにもよるけど、帰国子女そして維持したいなら、多読によるインプット・作文や発表によるアプトプットの両方を「深く」やる必要があるから。一般的な日常英会話だけではCALP/ALPまではたどり着かないから。ここまでくると、帰国子女関係なく、一般的な英語/他言語習得に共通している部分ですね。
で、我が家はどーするよ問題として、楽しく知育/体験学習を粛々と日英両方でやり続ける感じかなと。駐在先では日本語をより意識して、帰国後は英語中心に、多読ができればベストだけど、読書を好まない子どもになる可能性もあるし、就学前はそもそもまだ自力読みも難しい段階なので、いろんな体験学習を日本語・英語で楽しんでもらい、その延長で、一緒に調べ物をしたり、絵本を読んだり、絵日記や作品を作ってもらったりしようかなと思っています。今、我が家でやっている事と何も変わらないですね。
日本語の文法は英語より複雑なので、駐在先で日本語の文法をしっかり抑える教育をすることには少し不安がありますが、まぁ、そこはなんとかなるはず。最悪、帰国後に奮闘してもらうのがオチなので、あまり気負いし過ぎずに自然学習で進める方向でいきたいな。(願望)
ぐちゃぐちゃ脳内を吐き出しただけだけど、今のところの私の考えはこんな感じ。モヤモヤは消えたので、これからは具体的な、日本語と英語のバランスや、おうち学習について考えていきたいと思います。
就学前帰国子女の英語が抜けてしまうのは、なぜ?